結婚してください
・・それぞれの道
あれから私は英輔とは会っていない。
時々、メールは受信するが返信したことは一度もない。
そんな日々が続き、私は高校を卒業し大学へと進むことになる。
私は山崎と一緒に勉強に励み同じ大学の合格を勝ち取った。
自宅から通える距離ではなかった為、私は家を出て一人暮らしを始めた。
山崎からは一緒に住もうと言われたが、流石にこれだけは承諾できなかった。
それは山崎を守る為。
どう足掻いても私は藤堂亜紀だ。英輔の妻である以上山崎との同棲は問題が大きすぎる。
英輔の逆鱗に触れたら山崎がどうなるのか想像しただけで恐ろしくなる。
私は穏やかな生活を送ることが出来ればそれで十分だ。それ以上は望まない。
だから、山崎を愛おしいと思っていてもそれ以上は何も望まない。
望めば自分を苦しめることになるし、山崎も不幸にしてしまう。
私はあの家からは逃れられないのだから。
そう思うと大きな溜息がでる。
季節は春、新緑の爽やかな風に気分も爽快になるはずだが、新入生の初々しさとはかけ離れ私は一人死んだ目をして大学に入学していた。
そして、私の新たな生活が始まる。