結婚してください
部屋へ戻ると亜紀は既にシャワーを浴びてバスローブ姿になっていた。
やはり綺麗になった。あの男と寝たのか?
だからそんなに変わったのか?
以前に比べ顔が優しく感じるのは生活が変わったから?
俺がいないから? だとしたら最悪だな・・・・
「あの・・・今夜はどこで寝たら良いの?」
「ここだ。」
「ここで?」
かなり戸惑っている様子だ。それもそうだろう。
この部屋にはセミダブルベッドが一つしかないのだから。それもあまり大きくないベッドだ。
せめてキングサイズなら体を離して距離をおくこともできる。残念ながらこのサイズのセミダブルベッドでは無理だな。寄り添って寝なきゃベッドから落ちてしまうぞ。
まあ、今夜が俺たちには初夜だ。夜は長いんだ。焦るな、英輔。いつもの俺らしくなく緊張しているのが分かる。
「あ・・の・・・私もう寝ます」
急いでベッドの端っこに陣取りをする亜紀は布団をしっかり2等分するかのように分けて眠ろうとしていた。
必死になっている亜紀を見て思わず笑ってしまった。
「なに? 変?」
「同じベッドに寝るのにそれじゃあ落ちてしまう。」
「落ちないわよ!」
「落ちるって。まあ、見てろよ。お前、そっちに横になってみろ。」
亜紀を仰向けに寝かせ俺がその隣に入り込む。するとギリギリだ。
隙間を沢山あけて眠るのは出来ない。自宅のベッドじゃないんだ。
「な、俺の言った通りだろ?」
悔しいのか黙り込む亜紀。そんな亜紀は子どものように頬を膨らませている。
「おいで」
温かい亜紀のぬくもりを感じながら俺は初めて一緒に眠ることになる。
プラネタリウムの条件だからか、珍しくこの夜は何の抵抗もなく一緒に同じベッドで眠った。
けれど、亜紀の警戒心を解くまではと思い、抱きしめはしてもキスはしなかった。