結婚してください
「亜紀さんはどうされたの?」
愛華が少し機嫌悪そうな顔をして話しかけてきた。
「昨夜は疲れたんだろう。さっきまで眠っていたよ。
今、準備させている。」
「お客様を待たせるなんて失礼だわ。」
「そうだな。ホストの妻が遅刻では示しがつかないな。
今夜お仕置きをしておくからお前が気にすることではない。」
俺の妻は亜紀だと分からせる必要があると思って俺は愛華にわざと「お仕置き」と言う言葉を使った。
それの意味するところは十分理解できただろう。
「「「 おおっ 」」」
愛華とそんな話をしていると、周りのざわつく声に亜紀がやってきたのに気づいた。
屋敷から運び込ませたドレスを装い俺の妻らしい格好になっていた。
女性らしい装いに俺までドキッとさせられる。
昨夜一緒に眠った女とは思えないほどに亜紀は綺麗だった。
「亜紀、綺麗だ」
心からそう思えた。
けれど、亜紀は困った表情をするだけで喜びの笑顔はない。
「みんなに紹介しよう。妻の亜紀だ。
亜紀、こちらは藤堂家と親交のある友人たちだ。」
亜紀は約束どおり妻らしくにっこりと微笑んで会釈をした。
こんな妻を持てて俺は鼻が高い。そんな気分だった。
妻を同伴させる、いや、亜紀がいるだけで場がこれほど和むとは思わなかった。
想像以上だ。それに、亜紀のドレス姿が素晴らしい。
男たちの目が亜紀に集まっていく。
そして、みんなの輪の中心に亜紀の姿がありホストの妻らしく振舞ってくれていた。