結婚してください
「亜紀、元気ないけど大丈夫か? 顔色も悪いぞ。」
講義が終わった時に辛そうにしていた私を見かねて山崎が声をかけてきた。
「大丈夫よ。ありがとう」
そう言って立ち上がろうとすると目眩から足元がふらつく。
「大丈夫じゃないじゃないか! 少し休もう。
何か飲み物買ってくるから、そこで待ってて。」
そう言うと近くの自販機へ行こうとする山崎の腕を掴んだ。
「欲しくないからいい、買わなくても大丈夫だから!」
そう言うと、悪阻の症状が出てしまう。吐き気で気分が悪くなる。
「ごめん、トイレへ連れて行って!」
一番近くのトイレへと連れて行ってもらった。吐き気で気分が悪い私は足元が覚束なく山崎に支えられながら歩いていった。
トイレまで来ると少し吐いてしまった。気分が落ち着くまでしばらく洗面台に寄りかかっていた。
10分もしないうちに気分は良くなり廊下で待たせていた山崎のところへと行くと、山崎は私の顔を見て表情を曇らせた。
「もしかして妊娠してる?」
気づかれない方が変だと思うが、それでも山崎には申し訳なくて何も言えなくなった。
「本当のこと言って。藤堂の子どもなんだろ?」
私は頷くことしか出来なかった。
「あの、夏の山で出来た子ども?」
そこまで聞かなくても良いのに、と心が痛くなる。
「そうだよね、亜紀は藤堂家の嫁だから。当然だよな。」
山崎の冷やかな視線が痛く感じる。すると、大きな溜息をついて山崎が腕を組んだ。