結婚してください
英輔が騒いでいると、その声に何か起きたのかと慌てて柴崎さんがやってきた。
「どうなさいました!?」
私にしっかり抱きついていた英輔を見て、柴崎さんは慌てて部屋を出て行こうとした。
「亜紀が! 亜紀が妊娠したんだ!!」
英輔が興奮してそう説明すると、柴崎さんもまた狸にでも騙されたかのような顔になる。
「え・・・・と・・・今、なんと?」
「だから、亜紀が俺の子を妊娠してるんだよ。」
「ちょっと、待ってください!! どうやって妊娠するんですか?! 別居していて・・・・
あ・・・・そういえば、この夏に確か山でご一緒されてましたね。」
「そこまで詮索しなくても良いだろう・・・・」
「いえ、別居中の夫婦でお会いにもならないのにお子が出来るわけありませんから。それは大事なことですよ。
この屋敷のものは皆知ってますからね。」
柴崎さんが疑うのも無理はない。
結婚後2年過ぎても別居していたし、おまけに顔も合わせていなかったわけだし。
そんな夫婦に子どもが出来るはずはないのだから。
「一応親子鑑定の必要がありますので、よろしいですか?」
「おい、ちょっと待てよ。柴崎、こんなおめでたい時にそんな水をさすようなこと言うなよ。」
「こういうときだから必要なのです。申し上げにくいことですが、奥様は別居中は外で」
「柴崎!!!
たとえお前の発言でもそれ以上は許さないぞ!!
第一、俺に身に覚えがあるんだ! 亜紀を抱いてるんだ。それに、俺は避妊はしていない!妊娠しても不思議じゃないだろ!」