結婚してください

・・懐かしい顔


マンションへ引越して数ヶ月。


すっかりお腹も目立ち私は自由に動くことが出来なくなってきた。


季節は冬。寒さもあり体調に配慮し大学は休学している。


今は英輔の子どもを無事産むことに専念している。


あれから、英輔とは一度も会っていない。


それでも私の体を気にしてくれているようで、私のマンションに通いの家政婦と看護師を雇ってくれている。


それとマンションと私の管理をする人としてマンションにも執事として吉沢さんという女性を住まわせた。


気さくで母親的な家政婦さんのお陰で快適な生活を送れている。心の支えにもなってくれている。


体調管理は看護師さんに完全に任せている。そのお陰で以前のような体調不良も減り今ではすっかり元気になっている。


お腹が大きくなるにつれ離婚問題を早く解決したいと柴崎さんへ時折連絡を入れるが一向に聞き入れてもらえない。


やはり義父にお願いするしかないと思っている。


でも、今は多分無理だろう。妊娠中に離婚は成立しないだろう。


跡継ぎ問題が出てくるのだから。きっと、生まれたこの子は藤堂家に引き取られその後離婚となるはず。


多分 それまでは離婚を待たされるのだろう。


けれど、この子は渡せない。


それに英輔は私の子ではなく新しい奥さんとの間に生まれた子を跡継ぎにした方が良い。


だから、本当は一刻も早く離婚したいのに。


「奥様、明日、検診ですが私はどうしても用が外せませんので」


「大丈夫よ。一人で行くから。」


「いえ! 英輔様がご同行されるとのことです。」


「英輔が?!」


「はい、ですから明日は英輔様がいらっしゃるまでお待ち下さい。」


「分かったわ」


何故、英輔が・・・・・あの喧嘩以来顔を合わせていないのに。どんな顔をして会えばいいの?


でも、一緒に検診に来てくれるなんて。私、どうして嬉しいの?!


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