結婚してください

「亜紀の妊娠は君らも知っていることだ。
そして、その子が誰の子かDNA検査が必要だということも君らは知っている。」


「ちょっと待て!! 英輔、俺を疑っているのか?!
亜紀とはもう会っていないんだぞ!」


最初に食いついてきたのが井澤だった。


かなりの慌てようだ。本人には身に覚えがないのだろうか? かなり迷惑そうな顔をしていた。


「それに、この男は誰なんだ?
まずは自己紹介が必要じゃないのか?」


井澤にしてみれば面白くないだろう。亜紀の、藤堂家の長男の嫁が妊娠したその子の父親だと言われている様なものだから。


「まずは、腰掛けてくれ。俺から分かるように説明しよう。」


三人がそれぞれ離れたソファーへと座った。やはり、亜紀との交際絡みだ。同じソファーには座りたくなかった。みんな、そういう気持ちがあったんだろう。



俺は井澤と山崎をそれぞれどういう愛人関係だったかとその期間を説明した。


井澤は山崎の存在に驚いていたし、山崎もまた体だけの愛人契約を結んだ男がいたと知らなかったらしくショックを受けていた。


「そもそも俺は、英輔のところから逃げてきた亜紀を助けるつもりで結んだ契約だ。だから、それ以上のことは何もない。
第一、俺たちはお前の結婚前に終わっている。亜紀と別れてからは会っていない。
ましてお前たちの結婚を邪魔しようとも思っていなかった。

お前と同じ境遇の俺がそんな真似するわけないだろう。英輔の立場は俺はよく理解している。」


そうだ。この人は俺と同じ立場の人間だ。子どもを妊娠させるようなヘマは絶対にしない。


それに、あれ以来会っていないというのは本当のようだ。一応、亜紀の身辺調査をさせていたが井澤との接触はなかった。


やはり残るは山崎だ。


こいつは井澤とは違う。


亜紀が心から大事にしていた男なんだ。 そして、俺がいない間、亜紀の隣で支え続けてきた男だ。






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