結婚してください
俺は山崎と亜紀の本当の関係を知り安堵したのか腰が抜けたように床に座り込んだ。
亜紀は誰とも関係していなかった。それが分かると俺は嬉しさで涙が流れてきた。
結婚前からずっと亜紀を手に入れることばかりを考えていたんだ。
祖父の遺言による家督命令から始まった俺たち。
お互いに気持ちは全くなかった。
しかし、藤堂家の跡継ぎとして藤堂グループの後継者としてその立場を失いたくない思いで亜紀を必死に説得してきた。
それだけだった、俺にとっては妻とはただそういう存在だった。
なのに、何をしても亜紀には通じなかった。
どんなに俺が亜紀の気を引こうといろいろ考えアイツに合わせていろんなことをやってみたことか。
それでも亜紀には通用しなかった。
普通の家庭の女の子として生きたいという気持ちが強くて俺にはどうすることも出来なかった。
それどころか、亜紀を苦しめている俺がいることに気付いた。
もう、亜紀を苦しめたくはない。俺は笑っている亜紀が見たいと思うようになった。
だから、亜紀を自由にしてやりたいと思うようになった。けれど、それは離婚を意味するものだと分かると俺は胸が苦しくなる。
亜紀は藤堂家だけじゃない俺にも必要な女なんだ。
だから、離婚はできない。 いや、離婚したくないんだ。
もっと俺と過ごして欲しい。
もっと俺を見て欲しい。
もっと俺を感じて欲しい。
だから、亜紀、お前とは離婚しないんだよ。