結婚してください
毎朝、決まった時間に英輔は迎えに来る。
「おはよう、亜紀」
「おはよう」
これがいつもの挨拶。
だけど、今日はこれまでと違って弁当を渡す日。
私が弁当を渡すと少し戸惑った顔をする。
嬉しいのかイヤなのか良く分からない顔だ。
もしかして、本当は欲しくなかったのかな?
「藤堂さんの家のシェフと違って美味しくない弁当だよ。
いつもの豪華なヤツと違って質素なものだよ?」
「いや、嬉しいよ。マジ、作ってもらえるとは思ってなかったから。
ありがとうな。」
これまでに見たことのない極上笑顔っていうの? 素直な爽やかさの笑顔に心臓がドキッとしてしまった。
こんな飾り気のない笑顔も出来るんだね。初めて知ったよ。
明日はもっと手作りっぽい弁当が作れるように頑張るね。
今日は、手抜き弁当でごめんなさい。
「亜紀、行こうか」
「うん」
いつものように歩いて学校まで行く。
英輔にとっては長い距離を歩くことになるけど、文句言わず一緒に歩いてくれる。
まあ、SPさんはいつものようにどっかに隠れて付いて来てるんだけど。
人に見られて歩くのって恥ずかしいのよね。
最近、少し慣れてきたけど。やっぱり車の方が良いのかな?