結婚してください
「そう言えば、亜紀の両親には名前について相談はしたのか?」
「ううん。なにも」
亜紀は首を左右に振った。
この子は藤堂家の血を引く子だけども、亜紀の実家の血を引く子でもある。
今後、藤堂家の人間として育っていくのだから名前だけでも亜紀の両親に決めてもらうのも良いかもしれない。
「どうだろう、亜紀のお義父さんたちに名前を付けてもらったら。」
俺の提案に亜紀はかなり驚いていた。
藤堂家の子供なのに実家の両親にそんな大事なことを任せてもよいのだろうかと。
「藤堂家の子供だけど、亜紀の両親の孫でもあるのだから。
俺は、それでいいと思っているよ。」
「ありがとう!
お父さんもお母さんもきっと喜ぶわ!!」
亜紀は涙目になって喜んでいた。
さっそく実家へ電話を入れ亜紀は名前を付けてもらえるように頼んだ。
勿論、事情を聞いた実家の両親は快く引き受けてくれた。
俺も亜紀もどんな名前になるのか楽しみに連絡を待つことにした。
これまでの生活からは考えられないほどに、充実した穏やかな生活が続いた。
俺や亜紀にとってこれが幸せな時間というものだろう。
何の心配もなく手を取り合って協力しあいながらの生活をやっと送れることができた。
亜紀は俺を受け入れ、俺は亜紀が少しでも安心した生活を送れるように気を配っていた。
そんな生活がしばらく続いた。