結婚してください

それから数日間は引き出しを開けては閉めるという繰り返しだ。


離婚届の書類を目にすると引き出しを閉じてしまう。


ペンを取って名前を書けばすべてが終わる。


私が望んでいた離婚が成立する。


だけど・・・今は英輔のそばに居たい。


英輔がいない生活はイヤ!


あの日以来英輔はここへやってこない。


英紀の顔を見たくないの?


どうして英紀に会いに来ないの?


可愛くないの? 英紀は英輔の息子なんだよ!


私だって英輔に会いたいのに・・・・


会いたい。


英輔は、きっと私がサインするのを待っているのよね?


私に会いたいとは思っていないはず。


英輔が待っているのはこの書類なのよ。


英輔が見たいのは私じゃなくてこの書類なんだわ。

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