結婚してください
親父が帰ってしばらくすると亜紀が目を覚ました。


寝室へ行くと亜紀はバスローブ姿のまま、まだベッドに座っていた。


「よく寝ていたな。無理させ過ぎたかな？」


「ううん。そんなことないよ。」


「ごめん、加減できなくて。」


「気にしないで。」


俺は亜紀の表情が気になり気が付けば亜紀ばかりを見ている。


俺の瞳に映る亜紀の姿が欲しくてたまらない。


けれど、亜紀は困惑しているようだ。


見つめる俺の目から亜紀は顔を背ける。


亜紀の頬に触れたいと手を動かすも、背けられたその顔には届かず拳を握って下へおろす。


「さっき、親父が英紀の顔を見に来た。」


「お義父さんが？！　えっと・・・着替えなきゃ。」


「もう帰ったよ。
英紀の顔が見たかったらしい。
親父からお前と英紀を連れてこいって言われていたけど、連れていかないものだから痺れを切らしてここへ来たそうだ。」


親父は素直に祖父として会いたかったんだ。


ただそれだけなんだ。


俺も、その気持ちは同じ。


会いたいとその気持ちしかない。


だから、その気持ちを素直に伝えて親父に報告していない離婚についてを亜紀に説明しなければならない。


だが、どうしても俺には言えなかった。


亜紀と俺の離婚についての真実を見破られそうで。

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