結婚してください

ディナーのためのドレスアップの仕方は私には分からない。


けれど、英輔が私の専用の執事吉沢さんに指示して全て準備をしてくれた。


そして美容師を呼んで髪も綺麗にセットしてくれた。


まるでお姫様のような装いに鏡を見て自分の姿が信じられなかった。


「とてもお綺麗ですわ。
これなら英輔様も喜ばれることでしょう。」


「吉沢さん、英輔は何時頃になるのかしら?」


「もういらっしゃる頃かと思います。」


時間が迫り私の心臓はドキドキしている。


まるで高校生みたいに。


こんな装いしたのは学校でのあの紫陽花パーティ以来かも・・・


あの時もドレスを着てパーティ会場へ行ったんだったわ。


でも、あいにくの雨と藤沢愛華ら取り巻きにひどい目に合わされたのよね。


英輔は私と離婚後、藤沢愛華とこんなふうにディナーとか行ったのかな?


パーティにも以前のように一緒に行っているんでしょうね。


こんなこと、私が気にする必要ないのに。


藤沢愛華とパーティへ行って欲しくないって言いたい。


でも、私にはもうそんな資格はない。


私は英紀の母親として存在するのだから。


それ以上のことは何もないのだから。


英輔には求めたくても求めることはできない。


自業自得よね。


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