結婚してください
スウィートルームの部屋のドアを開けると、英輔は私に部屋へ入るように言う。
少し悩みながらも私は部屋へと入っていった。
「好きなところに座って。
ワインか何か飲むかい?」
「いいえ。アルコールはもういいわ。酔ってしまいそうだから。」
「酔っても良いよ。ちゃんとベッドまで運んでやるから安心して。」
だから安心して飲めないの。
だって、英輔は魅力的だし、今も心臓がどきどきしていて英輔を直視できない。
「少し酔っているのか? 顔が赤いけど。」
「だ・・・大丈夫よ。」
ディナーではアルコールは少し口に含んだだけ。
顔が赤いのは英輔がいるからよ。私を見ないで。
「また赤くなった。」
頬に手を触れられると自分でもわかる。顔に熱を持ち赤く染まっている。
触れる指先に体がビクリと反応する。
「ソファーに座ろうか」
緊張しているのが伝わったのか、英輔に肩を掴まれソファーまで押される。
私がソファーに座ると英輔はワインを手にとりグラスに注いだ。
「いい香りだ。亜紀のような香りがする。」
何言っているの?! 元妻を口説いているつもりなの?
英輔はワインを一口飲むとテーブルにグラスを置いた。
そして私の隣に腰を下ろした。
「それで、さっきの理由というものを聞かせて。」
私がこの部屋へ来たのは理由を聞きたいからなのよ。