結婚してください
・・亜紀の妊娠
クリスマスに英輔と過ごしてから暫くは会うことはなかった。
英輔は毎日忙しい日々を送っている。
父親の事業の勉強の為に専務に同行し仕事を覚えている。
毎日、寝る暇を惜しんで頑張っている。
私には執事の吉沢さんから報告を聞くくらいで後は誰からも何も連絡も報告もない。
ただ、英紀に会いにくる英輔をマンションで待っているだけ。
まるで英輔の愛人にでもなったかのようだ。
藤堂家の子供を産んだことで囲われ続ける愛人。そんな気分にさせられる。
それでも、離婚については私以外は誰も知らないのがせめてもの救いなのかもしれない。
こんな私でもどこへ行っても英輔の妻として扱ってくれるのだから。
「亜紀様、今日は英紀様の離乳食を作りますよ。一緒に買い物に行きますがよろしいですか?」
「あ、ちょっと待って!
今、英紀をベッドに寝かしつけるから。」
「それでしたら私がやりますから、亜紀様はお出かけください。」
「じゃあ お願いね。」
家政婦の田中さんと一緒に近くのスーパーまで買い物へと行く。
買い物リストは殆どが英紀の離乳食の材料だ。
1週間分を購入し、まとめて作りそれを小分けして冷凍保存する。
なので、離乳食作りは週に1回だ。
田中さんは子供のためのメニューを上手に考えてくれるし、薄味でとても健康的。
さすが、調理師と栄養士免許を持っているだけあって詳しい。
私は田中さんの生徒になったつもりで必死に勉強中。
勉強といってもこんなに楽しい時間はない。
英紀の為になるし私も誰かの為に何かを作る楽しみを覚えた。