結婚してください
一人でのお出かけだ、あんな豪華な車ではなくて公共機関を利用したい。
久しぶりにあの電車やバスの人混みが懐かしい。
人とすれ違う度に、すれ違う人の笑顔やしかめっ面に生活感が溢れる。
生きているんだって感じが伝わってくる。
私って根っからの庶民なんだと感じてしまう。
せっかくだからデパートへ行って買い物でもしようかしら?
藤堂家から離れて生活していたけれど、英輔の影響かしら素敵な服を欲しくなる。
ワゴンに山積みされた服ではなくデパートやブティックに並ぶシルクで出来た服を身に纏い英輔に見てもらいたい。
英輔に「綺麗だよ」って言ってもらいたい。
微笑んでくれたあの英輔の顔が忘れられない。
着飾って待つ女ってまるで愛人だよね・・・
それでもいいと思える自分がいる。
ため息をついて電車から降り、改札口へと向かうと懐かしい人に出会ってしまった。