結婚してください
私が山崎と会った数日後、
藤堂の屋敷でいつもの報告がなされていた。
「吉沢からの報告が上がっています。」
柴崎さんが私のマンションの執事吉沢さんからの報告書を英輔に手渡す。
報告書に目を通すと英輔はその書類を投げつけた。
「いったいこれはどういうことだ?!
また、あの二人は会っているのか?!」
「そのようですね。
英紀様を儲けられて少しは落ち着かれるかと思ったのですが。」
「少し目を離すとこれか?!
亜紀はいつになったら俺のものにできるんだ?!!」
怒りに任せ机の上の書類を投げつけた。
柴崎さんは散らばる書類を無言で拾い上げる。
書類を拾うと英輔の机の上へと置いた。
「ご自分の感情をそのまま奥様に向けられては如何ですか?
もしかしたら奥様もそれを待っているのかもしれませんよ。」
「亜紀は藤堂家を嫌っている。そして、この俺もだ。
恋人の山崎との仲を引き裂いたんだぞ。」
まさか、私が偶然にも出会った山崎とのことがこんな風に思われているとは夢にも思わなかった。
ただ、偶然会い、一時の懐かしさにお茶をしただけだったのに。
この時の英輔の怒りが収まることはなかった。