結婚してください
亜紀の妊娠が分かってからというもの、俺は、また、以前のように亜紀のマンションを訪れる日が多くなった。
前回出来なかった出産のための講習会など、子供のことで自分のできることはできるだけしたかった。
だから、定期健診には必ず亜紀と一緒に病院へ行ったし、必要な買い物などもできるけ付き添うことにした。
亜紀はそんな俺を煙たがることはしない。
俺がマンションへ行っても亜紀は嫌な顔はしない。
それどころか、俺の気のせいだろうか?
亜紀が嬉しそうな顔をしているように思える。
そう思いたいのだろうか?
どちらにしても、今は亜紀に拒まれていない。
だから、できるだけ亜紀のそばについていたい。
それに、山崎対策にもなる。
この前、病院から戻った後久しぶりにマンションへ泊まった時のことだった。
夜に山崎から電話がかかってきた。
液晶ディスプレイを見るなり亜紀は電源ボタンを押していた。
その時の亜紀の表情は見逃さない。
以前ならば山崎からの連絡は表情が柔らかになって嬉しそうだった。
けれど、今は違う。全く別人のような顔をしている。
眉間にしわを寄せ青ざめた表情をしていた。