結婚してください
英輔の代理で草薙さんがやって来たかと思えば、今度は執事の柴崎さんまでもがマンションへとやって来た。
今度こそ本当に離婚になるのだと感じた。
だから、こうやって次々と藤堂家から人がやってくる。
リビングへ通すと柴崎さんは苦笑いしたまま挨拶を交わし額には汗を流し困惑状態でいた。
いつも冷静な柴崎さんが珍しく動揺しているのだと感じた。
「久しぶりですね。お元気でしたか?」
「ありがとうございます、奥様。」
まだ奥様と呼んでくれるのね。
それにしても柴崎さんらしくない表情だ。
お屋敷のほうで困ったことでも起きたのかしら?
「今年度から英輔様は大旦那様の会社を手伝うことになっているのですが。」
「ええ、聞いているわ。
頑張ってやっているの?」
「それが・・・・休むことなく仕事に没頭されていて。」
それは最初から分かっていること。英輔はあの会社に命を賭けているんでしょうから。
藤堂家の跡継ぎとしてずっとあの会社で働くことを夢見ていたはず。
それが叶ったのよ。
何か言いたげな顔をしながらも柴崎さんはそれ以上詳しい話はしなかった。
「お体にお気を付けください。
何かありましたら遠慮なくこちらへ申し付けてください。
まだ、亜紀様は藤堂家の奥様なのですからね。」
それだけ言うと柴崎さんはマンションから帰っていった。