結婚してください
医師の勧めもあり亜紀が自ら記憶を解放するまで待つことになった。
俺たち家族や外部の第三者から情報を与えるのではなく、自らの意思で記憶を取り戻させる必要がある。
そして、余計な情報を与えないため亜紀は藤堂家の屋敷に引き取った。
英紀と生まれた子はこれまで通りマンションで暮らすことになる。
俺たちの二人目の子供は女の子で沙紀(さき)と名付けた。
亜紀に似てとても愛らしい子だ。
早く亜紀の記憶が戻り親子一緒に暮らせる日が来るように祈っている。
俺は頻繁にマンションへ行き子供たちの様子を見てくる。
殆どを看護師や子守にまかせっきりなのが心苦しい。
一日も早く亜紀と一緒に暮らさせたい。
子供たちに母親の温もりを与えたい。
なのに亜紀の記憶はあの入籍する高校2年生で止まっている。
だから、俺とは婚約者でまだ婚姻届を書いていない高校時代にタイムスリップしたかのようだ。