結婚してください
食事を済ませると亜紀は自分の部屋へと戻っていった。
亜紀の様子が気になる俺は、亜紀が大人しく部屋へ戻るかどうか確認し、その後、俺は自分の部屋へと戻る。
俺は、親父の会社のことで忙しい毎日を送っている。
だから、あまり亜紀に時間は割けない。
けれど、できるだけ亜紀のそばにいてやりたい。
だから、今日のような日曜日は一切仕事はせず亜紀の様子を見ている。
しかし、亜紀は高校2年生の時の記憶で止まっている。
俺が亜紀と一緒に過ごすわけにはいかない。
何故なら、亜紀は俺が婚姻届にサインをさせようと必死になっていると思っているからだ。
俺たちは二人目の子供が生まれた後に離婚する約束をしていた。
しかし、亜紀が記憶喪失になってしまった今 俺は離婚するつもりはない。
藤堂家の人間として最高の医療を施してやりたい。
その為には亜紀は藤堂家の人間でなければならない。
それに、亜紀が命がけで産んだ長女の沙紀も出産時かなりの負担がかかった。
後遺症こそ残らなかったが沙紀ももしもに備え定期的に診察をしてもらっている。
俺が焦って子供を作ったばかりに亜紀も沙紀にも苦しい思いをさせてしまった。
亜紀、沙紀、許してほしい。