結婚してください
午後から車を出し、俺たちが通った高校の近くまで行った。
そこで車を降りた俺と亜紀は二人で学校までの道のりを歩いて行く。
「覚えている? この道を?」
「高校へ行く道よね。どうしたの?」
「君は登下校に車を使うのを嫌っていた。」
ああ、そうなんだ。何度言っても君は俺の言うことなんかききやしない。
歩いて登下校するんだと言い張った。
本当にあの頃は俺は亜紀に腹を立てたものだ。
分からず屋の一般庶民の娘だって。藤堂家の一員になることがどんなに幸せなことかと思っていた。
あの家の跡取りとしての役割を果たそうとそればかり考えていた。
「そう言えば学校帰りにお弁当のおかずの買い物したような・・・・・
たしか、ほら、こっちにあるスーパーへ行ったよね?」
「行ってみるかい?」
亜紀は覚えていた。
亜紀の弁当には食べたことのないものが並んでいて珍しかった。
正直美味しいとは言い難い弁当だったな。
まるで珍味を食べているような。
今思えばなんてもったいないことをしたんだろうと思う。
亜紀の手作り弁当を。
今なら喜んで食べるのに。
亜紀が作ってくれるものなら何でも食べる。いや、食べたい。
俺って、そんなに亜紀に飢えているのか?