結婚してください

「ねえ亜紀、あの時の弁当覚えている?」


そう、亜紀が俺に作ってくれた弁当。


「覚えているよ。おこげの玉子焼き作ったよね。」


「もう一度作ってくれないか?」


そう、また食べてみたい。 俺の為に弁当を作ってほしい。


そして忘れている思い出を少しでもいいから思い出して欲しい。


「あんな弁当でいいの? 私、料理下手なの知ってるでしょう?」


「いいよ。亜紀が作ったものを食べたいんだ。
また、あの時みたいに一緒に食べよう。」


「うん、いいよ。」


とびっきりの笑顔で答えてくれた亜紀。


まさかそんな顔を見れるとは思わなかった。


心臓が飛び出すんじゃないかと思うくらい亜紀の笑顔にときめいた。


そして俺の体は正直だった。亜紀の頭を引き寄せてキスをしていた。


欲しかった亜紀の唇だ。柔らかい唇に思わず触れずにはいられなかった。


亜紀を困らせると分かっていても。


けれど、亜紀は拒まなかった。


唇が離れると亜紀の顔を見るのが怖かった。拒絶的な表情をされたら俺は心が砕けそうになるだろう。


だけど、見えた亜紀の顔は真っ赤に染まり潤ませた目がとても愛らしい。


愛おしい亜紀にもう一度触れずにはいられなかった。


スーパーで買い物カゴを押しながら少しの間、俺たちはキスを楽しんでしまった。


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