結婚してください

弁当の材料をカートに入れると俺たちは会計を済ませ車で屋敷へと帰っていった。


あまり急に歩かせても亜紀が疲れるだけだろう。


それに、記憶はその当時のものが残っていて新たに思い出した記憶はないようだ。


それでも一緒に買い物した記憶が残っているのは嬉しい。


お互いに共通する思い出だ。


けれど、スーパーでキスしたのは不味かったか?


亜紀はキスを受け入れたけれど、怒っていないだろうか?


それが心配だ。


後になって何か言われそうで・・・・本当に、俺は亜紀には弱くなったものだ。


亜紀のちょっとした仕草や表情に俺は振り回されている。


亜紀が微笑むと俺も微笑みたくなるし、亜紀が悲しめば俺も悲しくなる。


俺は亜紀に生かされているようだ。


ほんとうに、亜紀がいなければ俺はどうなるのだろう。




「亜紀? どこ行った?」


「亜紀様は厨房へ買い物袋を預けて、お子様たちのところへ行かれましたよ。
そろそろ授乳の時間だって。かなりお乳が張ってたみたいですよ。」


ああ、そうなんだ。


記憶がなくても亜紀はあの子の母親なんだ。


時計がなくても体が教えてくれる。沙紀の授乳の時間だと。


しっかり母親やっているよ、亜紀は。


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