結婚してください
「英紀が住んでいた家へ行ってみないか?」
もしかして記憶が戻りかけている?
だったら英紀と過ごしたあのマンションを見て亜紀がもとに戻る可能性があるのでは?
それに、あの部屋はきっと亜紀も忘れられない部屋のはず。
俺たちが何度も抱き合って愛し合った部屋なんだ。
俺には思い出深い、けれど、亜紀にはどうなのだろう?
忌々しい部屋なのだろうか・・・
そうでないことを祈る。
「明日、お弁当を作るわ。そのお弁当を持って英紀君が住んでいた家へ行きましょう。」
亜紀が作る弁当を持って、子ども達と一緒にあのマンションへ行く。
俺にとっても、亜紀にとってもちょっとした冒険だ。
明日が待ち遠しい。
まるで、遠足を待つ小学生の気分にさせられる。
亜紀に変化が出るだろうか?
それとも、既に亜紀の心は解放されたのだろうか?
ああ、早く亜紀を抱きしめたい。
俺たちの部屋でゆっくり過ごしたい。
亜紀を抱きしめて朝まで眠りたい。
そんな日はやって来るのだろうか。
記憶が戻れば、また、離婚話にもどってしまうのだろうか。
もう俺は離婚に応じる気はない。
だって、そうだろう。
今、亜紀とは順調だ。とてもいい関係が出来ている。
このまま過ごせないのだろうか?