結婚してください
情けない俺を心配してくれたのか亜紀が手を握ってきた。
亜紀からそんなことされたのは初めてのことだ。
慣れないことをされると流石の俺も赤面してしまう。
そんな俺が珍しいのか「クスッ」と笑うと「早く行こう」と笑顔で誘われる。
亜紀の笑顔で不安が吹き飛んでしまった。
つながれた手の指を絡めてつなぎなおした。
亜紀をしっかり繋ぎ留めておきたかったし、亜紀をもっと感じていたかったから。
エントランスからエレベータへと行き、そして、亜紀が暮らしていた部屋へと行く。
亜紀は周囲を気にしてか、それとも、マンションに興味をもったのかあたりを見回している。
「どうしたんだい?
何か気になるものでもあった?」
こんな質問したくなかったが、それでも亜紀の様子を確認する必要がある。
「ううん。素敵なマンションよね。
私もこんなところに住みたいわ。
私は古いアパートに住んでいたでしょう?
こんな綺麗で豪華なところ憧れるの。」
古いアパートに住んでいた?
それは、高校卒業後に住んでいたあのアパートのことか?!