結婚してください

もしアパートがそれであるならば、亜紀は婚姻届にサインしたことを覚えているはずだ。


俺たちが結婚したことを覚えているはず。


だとすると俺たちが今夫婦ということも知っている?!


どうなんだ? 亜紀?


だけど、そうなると、あの夏山での出来事は覚えているのか?


山崎とのことも覚えているのか?


いったいどこまで亜紀は知っているんだ?


記憶が戻っているんだ?!


「ねえ、もしかしてあの部屋?
どこかで見た覚えがあるような?
ここってテレビで紹介されるようなそんなマンションなのかな?」


亜紀のさりげない言葉。


それが俺にはとても恐ろしい爆弾のような言葉に聞こえる。


亜紀、もしかしてここへ連れてきたのは俺たちの離婚を早めるためのものではないんだよね?


そう信じても良いんだよね?


俺は、絶対に亜紀を手放したりはしない。


亜紀との仲を修復させるためにここへ来たんだ。




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