結婚してください
亜紀が実家へと帰ってしまった数日後に俺は亜紀の実家へと向かった。
実家の両親には亜紀が沙紀を出産した時から心配をかけていた。
亜紀の体の状態や記憶についても理解してもらい協力をお願いしていた。
今回、亜紀が逃げ帰ったことも実家の両親とも相談した。
そして、俺は亜紀を妻として迎えにいくからと両親に説明をしていた。
まだ完全に記憶が戻っていない亜紀は、今回のことを戸惑っているようだ。
記憶が一部ない状態に戸惑っている亜紀を藤堂家へ連れて帰るからと両親の了解も得ていた。
両親の好意に甘えさせてもらい、俺はそれから毎日亜紀の実家へと通い続けた。
「亜紀、話し合いたい」
しかし、亜紀は自分の部屋から一切出てこない。
俺の話を聞こうともしない。
持久戦か?と思いながらも、俺は一方的に亜紀への思いを話そうかと決意し亜紀の部屋の前に立った。
そしてドア越しに話し始めると、大音量のラジオの音に俺の声はかき消される。
亜紀を怒らせると本当に怖いものだと感じたよ。
関心させられるほど拒絶された。
けれど、その拒絶が俺の原動力になっているようだ。
諦められない俺は毎日しつこくも亜紀の元へ通って行った。