結婚してください
「すいません、英輔さん。
亜紀は一度言い出したら聞かないもので。
藤堂家にお嫁に行ったのにとんでもない娘で。」
「いえ、記憶が定かではないんです。
亜紀はとても不安だし怖い思いをしていたはずなのに。
俺が軽はずみなことをしてしまったので。
申し訳ないと思っています。」
そうなんだ。俺がすべて悪い。
だけど、ここで引き下がらない。
亜紀を連れて帰れるまで毎日粘ってやる。
その日も、意を決して亜紀の部屋へと向かう。
部屋のドアを何度も叩き話し合いたいと亜紀に許しを請う。
しかし、今日も無反応だ。
だからと黙って引き下がれない。
俺はドアの前に居座り亜紀が部屋から出てくるのを待っていた。
すると、気の毒に思ったのか亜紀の母親が座布団を持ってきてくれた。
しかし、こんな時に座布団など問題外。
亜紀の為に居座るのにそんなものは必要ない。
板張りの上に俺は正座をして待ち続けた。
流石の亜紀も24時間部屋に閉じこもるわけにはいかない。
食事もすれば風呂にも入る。勿論トイレへも行く。
その時が俺にとってチャンスだ。
バカげたことをしている頭のイカレた男だと思われてもいい。
亜紀に蔑まれてもいい。何としてでも亜紀の顔を見るまではここを離れない。