結婚してください
書斎へ行くと英輔が一人待っていた。
大きな机の前に座っていた英輔は立ち上がると机の前にあるソファーに腰かけた。
私にも座るように言われ、ぎこちない動きで英輔と反対側のソファーに座った。
「話っていうのは? 大事な話なの?」
私は最後まで気付かないフリをしていた。
恍けるしか私に今の生活を守る術を知らない。
英輔も少し緊張気味のようだ。あまり良い表情ではない。
「亜紀、単刀直入に言う。」
その言葉に私の体が反応しビクついてしまう。
「今まで藤堂家の嫡男として亜紀との婚姻を望んでいた。
だけど、俺はそのつもりは一切ない。」
ああ、やっぱり英輔はそうだったんだ。
家の為にこれまで無理して結婚しようとした。
でも、もう後継者として認められている。英輔には跡取りとなる子どもがいるのだから。
だから、私はもう必要ないのだわ!
こんな面倒な妻は必要ないのよ!