結婚してください
結局、その日は食事とお風呂の案内以外は私のところへは誰もやってこなかった。
英輔は勿論、顔を出すこともなかった。きっとあの彼女と楽しい時間を過ごしているのだろう。
「私は、こんな屋敷で何をしてるだろう・・・・帰りたい。」
私はいつの間にかソファーに眠っていた。
自宅が恋しいのとこれからの報われない生活に不安が押し寄せてきて涙を流していた。
眠っていた私は、様子を見に来た柴崎さんと英輔の間で交わされた会話など知りもしなかった。
「亜紀様は不安なのでしょう。知らない屋敷で一人で生活されるのですから。」
「俺がいるだろう?」
「亜紀様はお一人なんですよ。ベッドに運びますね。このままではお風邪を召されます。」
「いや、俺が運ぼう。柴崎、お前は明日の準備を頼む。」
「畏まりました」
私が柴崎さんに話した彼女の話は英輔には一言も話してはいなかった。
きっと、私の気持ちを察してくれたのだろう。
それと、この結婚を成就させるために。