結婚してください

弁当作りを頼んだ日から俺の思惑通り夜になると亜紀は早く寝るようになった。


俺が書斎で仕事していてもコーヒーを持ってくるのは草薙だ。


夜に男の顔なんぞ見たくはないが、まあ、亜紀を毎晩抱いて負担をかけるよりはましだろう。


それに、珍味が得意?とは言え亜紀はシェフから習って料理の勉強をしているらしいから今後は多少期待できるとは思うが。。。


しかし、かなりシェフは手こずっているようだ。


そう言えば、去年マンションへ行くときに弁当を作った時も厨房はかなり騒々しかった。


あれは絶対にシェフらとひと揉めしたに違いない。


あんな材料で俺に食べさせる弁当を黙って見過ごすシェフ達ではないからな。


なにせ亜紀は料理の才能はない。


だから亜紀は冷凍食品が大好きだ。以前作った弁当もほとんどが冷凍食品だった。


当時の俺はそれが珍しくよく食べたと思う。


今考えると恐ろしい食べ物だ。


まあ珍味と言えば珍味なのだが。


しかし、ここの厨房ではそんな冷凍食品は使うことはない。


おまけに俺の弁当ならば特にそんなものは使わせないだろう。


亜紀とシェフの対立がちょっとした名物になりそうだ。


けれど、そのおかげで俺の欲望が少しは収まりそうだ。


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