結婚してください

「どうして助けたの?
放っとけばよかったのに。」



「それが出来たらやってたよ。」



え? どういうこと?


それは情事の相手が傷つけば自分が困るから?


そんな女を相手にしていると思われたくないから?


きっと、そうなんだわ。



「最初、ホテルへ入るところを見た時、この女はまだ英輔に未練があるんだと思ったよ。
英輔の愛人と言われ続けた。けれど、英輔には愛する妻が現れた。
君は用済みだ。」


愛人と言われたこともあった。


でも、見せかけの愛人だわ。


英輔は指一本も触れようとはしなかった。


恋人同士の時からそうよ。


私には一線を引いてたのだから。


「なのに、君は英輔と似た男と部屋に入った。
正直その時の君の顔を見て気になって翌朝あのホテルで君を待ち伏せた。」


待ち伏せ?


偶然じゃなかったの?


「案の定、朝、部屋から出てきた。それも一人で。
男は情事が終わるとすぐに帰っていくようだったな。
結局、君自身はどうでもよかったんだ。欲しかったのは君の父親が持っている財産だけだったんだ。」


知ってるわ。


それは私が一番よく分かっていることよ。

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