結婚してください

それから数日、この女は俺の専属メイドとして働いている。


「お茶をお持ちしました。どうぞ。」


慣れない手つきで茶を淹れるのも面白い。


食器ががたつくし茶は飛び跳ねるし、本当にこれでお嬢様なのか? いや、お嬢様だから何もやったことがなくてこうなのか?


どちらにしても面白いヤツだ。


「亜紀、これから出かけるからお前もついて来い。」


「どこへ行くの?」


「買い物だ。」


明後日行われる藤堂家の婚約披露パーティに俺は招待されている。ごく内輪のパーティらしく盛大なものではない。だから、コイツを俺のパートナーとして連れて行くつもりだ。


藤堂と言えば、長男の英輔には恋人がいたな。確か、藤沢だ。藤沢愛華。いよいよ、アイツもあの女を妻にする決心がついたと見えるな。


藤堂家にはしきたりがある。長男の18歳の誕生日に入籍するという、なんとも可笑しなしきたりだ。


俺には考えられないな。だけど、そういうのも潔く結婚を決めれるから良いのかもしれないな。


俺は、今年大学へ通う20歳だ。それでも、まだ婚約者すら決まっていない。


家督相続の為にいずれ政略結婚させられるだろう。ならばつまらない女より俺を退屈させない女が良い。


そう・・・・コイツのような。


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