結婚してください
パーティ会場のホテルへと到着すると、そのまま俺たちは会場へと向かった。
すると、会場前の廊下まで来ると亜紀の顔色が変わった。
「どうした?」
「帰ります! ごめんなさい!」
慌てて来た道を戻ろうとする亜紀の手を掴み大声で叫んだ。
「亜紀!!」
その言葉に周りにいた藤堂家の使用人たちが騒ぎ出した。
「亜紀様!!!」
「え?」
藤堂家の使用人たちが次々に「亜紀様」と呼んでは取り乱す。
そして、藤堂家の執事が俺のところへとやってきた。
「伊澤様、本日はお忙しい中お越し下さいましてありがとうございます。」
「いや、それで、この騒ぎは何だ?」
「亜紀様、お探し致しましたよ。さあ、こちらへ。」
「どういうことだ?亜紀は今日は俺のパートナーとして連れてきたんだぞ。」
「ご存知ありませんでしたか?亜紀様は英輔様の婚約者なのです。」
はあ? 英輔の? いや、しかし、英輔は藤沢と付き合っていたはずなのに。
「英輔には女がいただろう!? 確か、藤沢愛華だ! あの女がいるだろう!!」
「何か誤解されていませんか?善道さん。お久しぶりです。
俺の婚約者の亜紀を返してもらえませんか? 俺には大事な女なんですよ。」
そう言って現れたのは藤堂家の長男、今日の主役の一人英輔だ。
しかし、その英輔が現れると亜紀が震えだした。亜紀の腕を掴んだまま離さなかった俺は、亜紀の顔を見ると、亜紀の顔は暗く沈んで今まで俺の屋敷で過ごしていた時とは比べ物にならないくらいの青ざめた顔をしていた。
しかし、次の瞬間、青ざめた顔は普通に戻ったかと思うと、今度は無表情な顔をして英輔の顔を見た。
「お騒がせして申し訳ありません。でも、今日は私は帰ります。」
「そんな我侭許さないぞ。柴崎、亜紀を連れて行け。すぐに支度させろ。」
俺の手から亜紀は離れ、英輔の指示通りに柴崎のところへと行く。そして、ほかの部屋へと連れられて行く。