結婚してください
・・メイドは楽しい
【亜紀★side】
あの婚約披露パーティの後、私が伊澤善道さんと愛人契約を結んだと英輔に知られることになった。
それは、善道さんがわざと英輔に話したらしいけども、英輔は何も言い返す言葉はなかったらしい。
結局は英輔は藤沢愛華がいれば良いのだから。
婚約者と一緒に住んでいても、平気で自分の女を連れ込むのだからと善道さんも堂々としたもので、藤堂家へ迎えの車を遣す。
初めて迎えの車が来た時は、さすがに執事の柴崎さんは嫌な顔をしていた。普段、表情はあまり顔に出さない人だから英輔も少し驚いていた様子。
「良いのですか?迎えの車が来ていますが。」
「本人の自由にさせれば良いだろう。行きたければ止める必要はない。」
「ですが、名目上は親友としての招待ですが、実情はそうでは・・」
「俺は部屋に戻る」
私の顔を見ることなくそのまま部屋へと篭った英輔。結局、私は名ばかりの婚約者だから、私が何をしても文句は言わないのよ。
言わないんじゃない。言えないのよ。自分だって好きな女を家に連れ込んでいるんだから。
お互い様よね?
お金持ちの家って家の存続のためにだけに生きているのかしらね。
こんな生活、最悪なのに続けなければならないなんて、まるで地獄を見ているみたい。
もう、パーティも終わったし諦めて婚姻届にサインするしかないのかな?
あ、指輪・・・・パーティから指輪を身に付けるように言われたけど、見ていたくない。
指輪を外すと柴崎さんに手渡した。