結婚してください
「違うの! これは無理してお願いしているだけだから!」
「彼女には似合いの服だと思うが。
英輔、亜紀はこの屋敷では生き生きと過ごしているよ。まるで女主人のように。」
「失礼な!
とにかく亜紀は連れて帰る!!
亜紀! 何をしている。
さっさとその服を着替えて来い!」
終始命令口調の英輔に反吐が出そうになる。
そんな私の表情を見て哀れに思ったんだろう。
俯き加減で元気のない私を気遣ってか善道さんが私の顎を掴むと上へと持ち上げる。
そして、私の唇に軽くキスをした。
英輔がいる前でだ。私と善道さんが愛人契約を交わしているのを見せ付けるために。
だけど、これは契約違反だ。
私には一切手を出さないというのが本来の契約だ。
けれど、英輔のあまりの横暴な言動に善道さんも怒りを覚えたのだろう。
とは言え、契約は契約。どんな理由があるにせよ、善道さんは約束を破った。
善道さんが私との契約違反をし二人の契約は不履行となった。