結婚してください

それでも両親の声が聞きたくて、家に帰れるかどうかを確認したくて実家に電話をかけた。


「あ、お母さん? 私。」


「亜紀? どうしたの? 元気にしていた?」


「聞きたいことあるんだけど。」


「どうしたの?」


せっかく娘が電話をかけているのに、嬉しい声していない?

何故? 娘が電話してるんだよ。


「藤堂家からの結納金って幾らなの?」


「え・・・結納金はないけど・・・・」


お母さん、明らかに変だ。言葉に詰まっている、そんな感じの話かた?


「結納金の代わりに、お父さんとお母さんが一生安心して暮らせる保障をしてもらえることになってるの。」


やっぱり、そうなんだ・・・・


「もしもし? 亜紀? あのね、でもね、藤堂家では亜紀のことはね、ちゃんと・・・聞いてる?! 亜紀?」


聞かなくても分かるよ。普通のサラリーマンの家庭の娘を藤堂家がお金持ちのご令嬢と同じ扱いするはずがないよ。


英輔みても分かるじゃない。


私に残された道はこの家の嫁になることだけ?


でも、それでも抵抗はしたい。


実家へ帰れないのなら、私なりの抵抗をする。


「もしもし?! 亜紀!」


お母さん、ごめんね。





私は 携帯電話をお風呂の浴槽に落とした。

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