結婚してください
その夜は、そのままベッドの布団の上にうつ伏せになって眠ってしまった。
朝、目を覚ますと眠った時の格好だった。
なんだ、昨夜は誰もこの部屋に入ってこなかったんだ。
まだ早い時間だったけども、英輔と顔を合わせたくないこともあって、制服に着替えるとそのまま使用人の通用口から学校へと出かけた。
藤堂家では私の姿がなくなったことで慌てて私を探し出す。
「あの、制服がなくなっています。」
「だったら、学校へ行ったのは間違いないだろう。」
「英輔様! 浴槽に亜紀様の携帯電話が落ちていました!」
「ったく、手のかかる婚約者殿だ。
もういい、後は学校で確認をしてくるから。
柴崎、今日学校から帰ったら、亜紀は絶対に部屋から出すな。」
私にまた逃げられたと思った英輔はかなりのご立腹のようだ。
なんど怒られようとも、説教されようとも、私は私のしたいようにする。
どうせ逃げられないのなら、こうでもしなければあの家では息が出来ない。
苦しくなるばかり。
少しでも早く伊澤家に代わる心の拠り所を探さなきゃ。
このままでは 私がどうにかなってしまいそう。