結婚してください
朝食を済ませた私は自分の部屋へと戻っていく。
この日は学校が休みのため、自室で大人しくしている。
学校が休みの日はつまらない。部屋の中で大人しく一日が過ぎるのを待っているだけだから。
一方、食事を終えた英輔は書斎で柴崎さんと今後の話をしていた。
「あんな約束してもよろしいのですか?」
「親父は遺言を守らなければならない義務がある。それは俺も同じだ。亜紀の戯言には付き合うつもりはない。」
「では、最初からお父上に会わせることは」
「するわけないだろう。そんなことしたら、俺が疑われる。
ここは、大人しくさせるのが一番だ。なんとしても婚姻届にサインしてもらわなければ、この藤堂家の嫡男の俺が後継者として認めてもらえないんだぞ。
こんな屈辱あるものか。」
英輔は自分と私の価値が同等扱いなのが気に入らないようだ。一般庶民の何の取り柄もない普通の女子高生。
納得できないのも無理はない。あまりにも育ちも家柄も違いすぎるのだから。
「それで携帯電話はまだこのままで?」
「毎日なんだろう?」
「はい、通話記録を確認しますと毎日最低1時間は通話していらっしゃいます。」
「あの男なんだろう? 全部」
そう、毎日私と山崎は1時間以上の電話をかけている。話を始めると終わることを知らずに何時までも話し続けてしまう。
時にはベッドの中で眠りながら通話していることもある。一番安らげる声を聞きながら眠りたくなるのだから。