結婚してください

憂鬱な表情で車に乗り込む私に柴崎さんが何か言っていた。


しかし、私の耳にはその言葉は届かない。どうせ私は藤堂家の人形と同じ。どんなにもがいても足掻いても私の言葉は誰にも届かないし、全て打ち消されてしまう。


あれ以来善道さんと会うことはない、山崎とも電話でかろうじて話はできるが最近では電話のチェックが入っているのに気づき思うように山崎とも話せない。


実家への出入りもさせてもらえない、学校の登下校は藤堂家の車だ。


屋敷に戻ると自室に篭るだけ。私はいったい何のためにここにいるのだろう?と、最近息をするのを忘れそうになる。


苦しく辛い毎日なのだ。食事の時に英輔と顔を合わせるがそれでも見たくない相手の顔は極力見ない。目を合わせない、言葉を交わさない。


唯一の私の抵抗だ。


そして、食事が喉を通らない。


藤堂家のご飯は美味しくない。こんなのが料理だなんて・・・・・どんなに貧相でもお母さんが作ってくれるご飯を食べたい。


お母さんが待っているあの家に帰りたい。


そんなことを考えていると会場になっている北陽学園のパーティ会場へと到着した。


車は玄関に着けられ私は降りていく。


すると会場からダンス音楽などが聞こえてくる。


外は雨が降り始め空を見ると遠くで稲光が時折見える。


気が進まないパーティだが行くしかないだろうと意を決して玄関へと入っていった。


すると、玄関ホールに数人の女子が集まっていた。何事かと思っているとそこにはあの藤沢愛華がやってきた。






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