結婚してください
「あら、体調はもうよろしくて? 英輔からそう聞いてますわよ。」
「いえ、大丈夫です。」
「そう、ではあなたも楽しんでいらしてね。」
まるで自分のためのパーティのような話し方をする人だわ。これは生徒みんなのパーティ。自分ひとりのためにあるのじゃないわ。
私は目に入らないんでしょうね。そのまま会場の方へと向かっていった。
大きな扉を開けるとそこは華麗で賑やかなパーティ会場。私とは別世界のところ。足が竦んで思うように歩けない。
すると残っている数人の女子に体を掴まれ押し戻される。
「これから先はあなたは入れないわ。」
「そうよ、ここは下賎な女の来るところじゃないの。藤堂様は藤沢様のエスコートをされていらっしゃるのよ。あなたは邪魔なのよ。」
「もともとあの二人は恋人同士。家の婚約者だか知らないけど、あなたの出る幕はないのよ。」
「さっさとお帰り。」
「そうよ、そんな似合わないドレス。どこで買ったかしらないけど。早く出ておいき!」
そう言って玄関の外へと押し出される。
雨に打たれた私の姿を見て女子らはクスクスと笑い会場へと入っていった。
雨で濡れた私はそれでも玄関の中へ入り雨の滴を払い落とし会場のドアから中の様子を伺ってみた。
別世界だけど、いずれ私もこんな世界に身をおくのか?と、そんなことを思いながら見た。
煌びやかな内装、豪華すぎて私には入っていけそうにない。生徒たちみんな素敵なドレスを纏いダンスやお喋りを楽しんでいる。