結婚してください
やっぱり私とは世界が違う。 ドアから離れようとした時、私の視線の先に英輔の姿を捉えた。
英輔の隣にはあの藤沢愛華が腕を組んで立っている。まるで恋人同士が寄り添っているかのように。
藤沢愛華も英輔も楽しそうに微笑んでいる。あんな英輔の顔を見るのは初めてだ。
これが英輔の世界なんだとあまりにも違いすぎる身分に会場から去った。
玄関へ出て車が来るのを待っていた。しかし、私の車はまだ直ぐには来ない。
食が進まず食べれなくなっていた私の体にこの冷たい雨は堪えた。
振るえと寂しさと虚しさで私の心と体は耐えられなくなりその場に倒れてしまった。
私が倒れたことに気づいた生徒たちの悲鳴が会場の方まで響いた。
何事かと会場からホールへと人が集まる。
「おい、あれは・・・」
「田所じゃないのか?」
「何故彼女が?」
野次馬の声が英輔の耳まで入ってくると、何事かとホールへやって来た。
そこに私が倒れているのに気づいた英輔は私のところまで急ぎやって来て抱きかかえた。
「英輔! 係りのものに任せましょう。保健室が開いているはずよ。」
「いや、連れて帰る。車はまだか?!」
「ただ今、手配中です!」
会場の世話をしている係りのものが慌てて車の手配をしていた。
「軽くなっている・・・・」
そんな英輔の言葉には気づかずに私は意識を失ったまま抱きかかえられていた。
「英輔! せっかくのパーティなのに、その子は家のものに任せれば良いでしょう!」
「だまれ、亜紀は俺の婚約者だ。俺が連れて帰る。」
「でも!!」
「愛華、お前でもそれ以上言うと許さないぞ。」
英輔の言葉にその場の声が静まる。