結婚してください
翌朝、目を覚ました私のベッドの横に英輔が椅子に座りベッドにうつ伏せになって眠っていた。
英輔が一晩中付いていてくれた? どういうつもりで?
看病なのか、ただの監視なのか、私の病気が悪化して自分の責任を問われるからやっているのか?
どちらにしても一晩一緒の部屋に居たというのが私は気分の良いものではなかった。
素直に看病してもらえたと、嬉しいという気分にはなれなかった。
体を起こそうとしたら、頭のふら付きで体を起こせない。そこで体を横に向けベッドから降りようとした。
が、足を床につけ立ち上がろうとしたら目眩がして思わずベッドに倒れこんでしまう。
床に膝をぶつけてしまい痛みが走る。
私が倒れた音に驚いて英輔が目を覚ました。
「どうしたんだ?! 何やっている?!」
倒れた私を抱きかかえベッドに乗せると布団を掛けてくれた。
そして、熱がないかどうか額に手を当てている。
「熱はなさそうだな。まだ起きない方が良い。お前は昨日パーティ会場で倒れたんだ。
だから今日はゆっくり休め。」
柴崎さんと同じだと思った。柴崎さんは自分の務めを果たしている人。そして、この人も、自分が藤堂家の跡取りとしての役割を果たそうとしている。
婚約者が病気だから看病をして自分の務めを果たしているだけ。責任と言う文字が重く圧し掛かっているんだ。
だから、私が何をしても何を言ってもこの人たちは平気でこんなことができるんだ。
目的があるから、任務があるから。そして、私には希望もなにもないから、ここでの責任も何も考えられないから自棄になってしまっているんだ。
だから、どう足掻いてもこの人には勝てない。もう 私のあの生活には戻れないんだ。