第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
目的の美容院に辿り着くと、早速店内に入った。店内には女性しかおらず、室内のレイアウトも可愛らしいのもだ。
電車の中でギフトから、フィネル・タラードの容姿的特徴を聞いていたので、店内に入ってすぐその特徴に合致する人物を探した。
一通り見回したが、特に該当する人物は居なかった。
店員が俺らの元にやって来た。店員は髪をカットする為の椅子に連れていこうと促すが、ギフトがそれを断る。


「フィネル・タラードさんって居るかな?」

「えっ?...」


ギフトの問いに、店員は戸惑う。
作り笑いを浮かべるギフトは店員の腰に腕を這わせる。鼻先がつきそうな程顔近づけ、もう一度問いた。

店内の全ての視線が2人に注がれる。少し離れたところでは、黄色い声もあがった。
店員は顔を赤くししどろもどろになりながら、ギフトに何かを言った。
聞き終えたのかギフトは店員を離すと、颯爽と店内を後にした。俺もギフトの後に続く。
店内を出ると、ギフトは俺の方を向いた。


「フィネル・タラードという女性はいなかった。」


輝くような笑顔でそう告げた。


「ちょ...それってどういう事だよ!?」

「解らない...。楽しくなってきたぞ。久しぶりに手応えのある依頼だ!心躍るよ!!」


はしゃいでいるギフトは、本当に29歳なのかと心から疑いたくなった。
それより、フィネル・タラードが居なかった。という事の方が重大だ。ジュラル・ミルが、嘘を付いたとは考えにくい。
この依頼は、何かある。俺はそう思わずにはいられなかった。
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