第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
俺とギフトは、取り敢えず情報を集める事にした。
活気溢れる人通りの多い大通りを抜け、人気の無い錆びれた街に足を運んだ。
この国にはこのような見捨てられた街が幾つもある。此処はその内の1つだ。 貧民街と言っても過言ではないこの場所は、迷路のように入り組んでいる。

ゴミ溜めのような道を、俺らは迷いなく進む。
貧民街はよく用も無く歩き回っていたで、ある程度の道は解る。
勿論用がある時にも、貧民街は訪れる。
人気の多い街中より、此処のような場所が情報がより多く早く入る。
一体どのようにして仕入れているのかは不明だが、彼らの情報は確かだ。
ギフトは知らないが、俺も1人頼れる情報屋を持っている。
だが、今回はギフトが先頭に立って先を進んでいる為そいつに出会う事はないだろう。

暫く歩いていると、人だかりが見えた。
見窄らしい服を着た奴らが何人もいる。
ギフトはその中に迷い無く入って行った。
人だかりの中心に立つと、声高らかに言い放った。


「フィネル・タラードと言う女性の情報を持っている奴はいないかッ!?情報をくれた奴には50,000ラルク渡そう!!!!!!」

「なっ!?おま...!?」


ギフトは懐から財布を出した。
そして本当に50,000ラルクを出すと、頭上に掲げた。
その場に響めきが起こる。次の瞬間、ギフトに向かって飛び掛るかの如く、一斉に皆口を開いた。
周りなどお構い無しに1人1人が、喚き散らす。
余りの五月蝿さに耳を塞がずには居られなかった。
人混みに埋もれているギフトを横目で見る。
ギフトもタイミング良く此方を見た。この上ない笑顔で俺に何かを言っているが、全く解らなかった。

俺はこの騒ぎがおさまるまで、暫くじっとしておくとにした。
嫌なくらい大きな溜息が口から漏れた。
普通此処の奴らに50,000ラルクも、渡す奴がいるか。此奴らにとって50,000ラルクはかなりの大金だ。かと言って俺らにとって端金という訳ではないが...。
少なくとも俺はこんな奴らに50,000ラルクなんて渡さない。
ギフトは普通にしていれば頭が良い。もっと言うなら、この国に十分貢献できる程だ。
だけど、天才と馬鹿は紙一重というもので現実のギフトはあれだ。

俺と同じくあいつも相当な欠陥品なんだろうな。
もう一度ギフトの方を見ると、人だかりは消え、代わりにぼろぼろになったギフトがムカつく笑顔で立っていた。
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