第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
意味有りげな笑顔のまま、ギフトは俺の元に来た。
何か解ったのだろうか。それなりに身を犠牲にして...。
着ていたコートには泥や砂が付着しており、髪もボサボサだ。
馬鹿な事をするからだ。
頭が良いのだから、もっと効率の良い方法を考え出せば良かったのに...。
いきなりギフトは俺の肩を勢いよく掴んだ。無駄に力が入っていて正直痛い。


「誰も知らないってッ!!」

「...は?」


思わず反射的に聞き返してしまった。では、先程出した50,000ラルクは一体何だったのか。
俺はギフトを払いのけると、盛大な溜息をついた。


「お前なぁー、何の為の金だったんだよ...さっきのは。」

「ごめん...。」


ギフトもかなりショックだったらしく、座り込んでしまった。
俺は仕方無くコートのポケットから、携帯電話を取り出した。
登録数の少ない電話帳から、行き付けの情報屋の番号を探す。
見つけると直ぐに電話をかけた。
3~4回コールが鳴ると、聞きなれた声が聞こえた。


『どんな情報が欲しいんだい?セルリア。』

「悪いが今回は直接情報を聞きたい。今何処にいるんだ?」

『何時もの場所だよ。...フフ今回は誰か連れでもいるのかい?』


嫌味たらしく言ってくる。俺はつい苦笑した。


「面倒な奴が1人な。」

『そうか、楽しみにしてるよ。』


電話を切ってギフトの方に視線をやる。ギフトは地面に座り込んで、地面に訳の解らない数式を書き込んでいた。


「俺の信頼する情報屋を紹介してやる。早く行くぞ。」

「...うぅ、セルリアが優しいよ...。」


いい歳した大人が女々しい事いうなよ。
顔を上げたギフトの瞳には涙が溜まっていた。
泣く位なら最初からするなよ...。
だけど、その泣き顔はそこらにいる着飾った女達より、ずっと綺麗だった。
兄弟揃って女顔だからだろうか。
くだらないと頭の中で呟くと、ギフトにひと蹴り入れて情報屋の元へ急いだ。
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