第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
ギフトさんが先頭を切って、〝マーシャル〟の元に向かった。
いきなり近付いて大丈夫のだろうかと、思いながら僕も恐る恐るギフトさんに続いた。
ドールさんは言うまでもなく、ギフトさんに続いた。

僕達に気付いた〝マーシャル〟は怯えるように此方を見た。
ギフトさんの情報通り、他人への不信感が高いようだ。
村人の態度を見ていれば、必然と解る事なんだけどな。
やはり、様々な格差が大きいこの国では地域によって、“迷信”など信じる場所もある。
この村も其の1つだろう。

怯え、不安に駆られている〝マーシャル〟にギフトさんは笑顔を投げかけた。
〝マーシャル〟の警戒心を解くためだろう。
毎度の事ながら、狡猾な人間だよね。僕には出来ない...きっと経験からくるものもあるだろうから。
悲しい事に僕には其れが無い。羨ましいな...。


「君が〝マーシャル〟であってるかな?僕達は新聞を見て此処まで来たんだ。危害を与えるつもりはないよ。だから、笑って...。」


そう簡単に他人の警戒心など消えるはずもなく、マーシャルの疑いの目は尚此方に向けられたままだ。
僕もマーシャルから警戒心を無くして欲しくて、ギフトさんの言葉に便乗する。


「本当です!!僕達、君と仲良くなりたくて...その、えっとー...。取り敢えず、何と言うか...“友達”になりませんか...?」


言葉が上手くまとまらず、デタラメな構造の文が口から零れた。
余計に不安がらせたりしていないだろうか...。僕の頭の中は其れで一杯だった。

...齢19の青年は会話が苦手だ。
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