第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
「...ぼくも、“友達”に...なりたいな。」


ギフトさんの背中の上でディーブ君がほそぼそと口にした。
ディーブ君が友達を作ろうとするところなんて、初めて見た。何だか感激だな、弟が成長したみたいで...。お兄ちゃんと言う人間はこんな感情を抱くのだろうか。

マーシャルは“友達”というキーワードに反応したのか、僕達への警戒の眼差しが薄れてような気がした。

マーシャルが何か言いたげな顔をする。
そうか、マーシャルは喋れないかったんだっけ。
マーシャルは先程まで花壇に水を蒔いていた如雨露(じょうろ)を、指先で鳴らした。
少し規則的な其の音はすぐに僕の頭の中でヒットした。

モールス信号だ...。

ギフトさんも其の事に気付いたのか、口角が上がったのを認識した。

モールス信号の内容は以下のようなものだ。


《わたしも もとだちに なりたいです》


其の言葉聞き終えると、ギフトさんが今までに無い笑顔でマーシャルを見つめた。

少しだけセルリアがこの笑顔を嫌う理由(わけ)が解った気がする。
とても...いや、あからさまに何かを企んでいる笑顔だ、黒過ぎる。
そうは言っても、既に僕は其の企みを知ってしまっているのだけれど...。
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