第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
「セルリアが敬語とかキモイよ!!如何したの!?」

「いや、落ち着いて下さい...今はケビンです。」


女性は僕の両頬に手を添えた。
やっぱり女性は冷え症が多いのかな、女性の手は冷たかった。


「ん?...ああ!!!二重人格か!!」

「あ、はい...。理解が早くて助かります。」

「演技じゃないよね?」


疑われてる...。確かに信じてもらえる内容でもないけど、そろそろいい加減に退いてもらえないだろうか。

ギフトさんに視線を送る。
ギフトさんは仕方が無いと言った感じで、女性の襟首を掴んで僕から離した。
そんな猫みたいな扱いをしなくても...。


「やぁ、久しぶり。アヴァン。」

「ギ、ギフト...。」


ギフトさんも女性の事を知っているようだ。
『Sicario』と関わりがある人物なのだろうか。


「ケビンが困ってただろう。謝れ。」


ギフトさんが黒い...。其の微笑みと発言の内容が一致していない。
アヴァンと呼ばれた女性は、ギフトさんに言われた通りに僕に謝った。

アヴァンと一緒にやって来た青年はマーシャルを庇うように立っていた。
この青年が村で聞いた、付き人なのだろう。
マーシャルの幼馴染みだったっけな。


「何者だ!!お前等!」

「あれ〜?アヴァンはよくて、僕達は駄目なの?」

「俺は其の女も含めて言っているんだ!!勝手に付いて来やがって!」

「ねぇ、アヴァン。如何やってこの青年と一緒に来たの?」


アヴァンは引き攣った笑顔をギフトさんに向けた。
ギフトさんの背中の上にいるディーブ君も、呆れ顔でアヴァンを見つめている。


「マーシャル!大丈夫かい!?」


マーシャルは青年の言葉を聞くと、ゆっくり頷いた。
そして、青年に何かを伝えたそうな顔をして、声の出ない口を動かした。
青年は其の口の動きをじっと見つめた、如何やらこの青年は読唇術が使えるようだ。


「マーシャル!何言っているんだ!!そんな簡単に信じて、後で酷い事されるぞ!!」

「酷いね、青年。僕達は純粋に友達になりたいだけさ。其れに、既に彼女の了承は得ている。過保護過ぎやしないかい?シヴァル君。」


あれ、ギフトさん...名前知ってたの!?
僕が驚きの表情でギフトさんを見ていると、ギフトさんが自慢気な笑みを僕に送った。

そして、声を出さずにギフトさんが僕に向かって口を動かした。

《これと おなじ》

ギフトさんも読唇術を使えるという事か。
何時の間にそんな技術を手に入れたのだろうか。


「何で名前...!?」

「君と同じさ〜。そんなに驚く事かい?」

「と、取り敢えず...御引き取り願おうか。」

「君も早い内に御引き取り願うよ。」


ギフトさんはそう言い残すと、帰ると言った。
まだアヴァンの襟首を掴んだまま、来た道を戻って行った。
仕方無く僕もギフトさんの後に続く。ドールさんは言わずと知れずちゃんとギフトさんにくっついている。
ギフトさんのあの言葉は如何いう意味なのだろうか。
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